苦の後に天国が。 来ることもあるのかもしれない

これは2009年に私がトライアスロンに挑戦をした時の記録です。
ドキュメンタリー風に、その時にあったとの事実と自分の氣持ちを書きました。

その1年前に、私は離婚をしました。
当時最愛の妻と別れたことによりどん底に落ちた私は
なんとか自分の自信と誇りを取り戻すために
あえて過酷な「トライアスロン」という競技に挑戦をしたのです。

離婚をした時は、肥満体のでぶでぶなカラダでした。
それを自分を奮い起こし、とにかく自分に自信が持てるように奮起したのです。

とはいえ、最初に走ってみた時には心臓がバクバクいって
わずか1キロですら走れませんでした。

でも約半年間のトレーニングをして
初めてトライアスロンの大会に出た時の記録です。

これを読んだ方が、
やればできるものなんだ !!
という氣持ちになってもらえたら幸いです。

 

《 前 編 》

とうとう初のトライアスロンが終わった。

結果は、目標の3時間は切れなかった。

思うように走り抜けることはできなかった。

けれども、今は静かに、この結果を受け止めている。

レースタイム

総合記録  3時間09分01秒
スイム   32分49秒
バイク   1時間38分29秒
ラン    57分43秒

完走者299人中、167位
途中リタイア17人
スイムでのリタイア15人

完走をする。
という決意の目標は達せられた。

完走するための制限時間は、4時間。
今回自分が走った時間は、3時間9分1秒。

当初の目標は達せられたが、
単純には喜んでいない。

 

 

初のレース体験は
あいにくの雨だった。

すでに雨を覚悟してきたが、不安はもちろんある。

アップするまでに、一緒に来ている「小金井トライアスロン連合」のメンバー5人とずっと一緒だったが、
会場で「超初心者トライアスロン」仲間と出会い、気分はなごやむ。
超トラのセイラーさんは、なんとトランジションエリアではボクの隣だった。
こういう出会いは、とても嬉しいものだ。

入水チェックに行くと、ぞくぞくと超トラ仲間と出会う。
三浦海岸ではじめて出会った仲間が、ここ伊豆大島で再び出会うのは、とても感慨深い。
ボクが生まれてはじめてトライアスロンを体験したのが三浦海岸での練習会。
そしてセイラーさん他、超トラの仲間はみんな初心者トライアスリートなのだ。
チェックのために一緒に海で泳ぐ。

ここまではすでに準備をした。
後は、レース開始を待つばかり。

レース開始に先立って、大会委員長らのあいさつがある。

今日の悪天候は、みなさまのせいではありません。
これも市長の普段の行いが悪い、不徳のいたすとろです。
と、ハンドスピーカーであいさつする人。
笑えるよ。

まず、第一ウェーブが先行して飛び出す。
第1ウエーブは緑色のスイムキャップ。40代以下の人たちだ。
ボクらは第2ウェーブ。第1ウェーブから5分ほど遅れてスタートをする。

ファーンという気の抜けた合図音。
その音を聞いて、ダッシュする。
スイムでは混戦のバトルがあるので、ほうぼうから殴られたり蹴られたりする
ということを知っていた。
だからまずは、その混戦から脱出するために全力で泳ぎ出す。
なぐられるのは嫌だし、なぐるのも嫌なのだ。

怒濤のごとく、海を泳ぐ。
思ったよりも腕が重い。
はじめから、なぜか調子が良くはない。
それでも、がんがん行く。

何人の腕もがぶつかり、脚でけられ、後ろから腕が伸びてきて脚や腰をひっぱられる。
こちらも、おそらく何人かを蹴っただろう。
集団の戦の状況ってこういうことなんだろうな。

海のうねりが激しい。
前を向くと、がばっと塩水を飲む。むせる。
水泳は得意のつもりだが、プールで泳ぐ水泳と海で泳ぐのではまるで違う。
周囲のバトル。
海のうねり。
行き先のブイは、波のうねりで見え隠れする。
最初から、余分な力を使ってしまう。

混戦の中、泳ぎを続ける。
ブイを回る時は、まるで鯉が滝登りをするほどの行列だ。
海の中で、通勤ラッシュがあるものなのか。
相手をかき分け、前へ進む。

あまりにも、海水を飲み込み、かつ前が見えないため、クロールから
平泳ぎに切り替える。
実は、もともと俺は平泳ぎの選手だったので、ヘタなクロールより早いのだ。
平泳ぎで、息を整えながらクロールで泳ぐ他スイマーと同等に進んでいく。

それでもコースを外れ、ライフセーバーからホイッスルを吹かれ警告される。
その数、3度。
かなりムダな距離を泳いでいることになる。
体力もかなり消耗した。

1周目。
まだ51.5キロのたった750メートルで、こんなに疲労している。
この後の展開が危ぶまれる。
それでも、いくっきゃない。

荒れて人がたくさんの海の中。
とにかく次のゴールへ目指して進む。

2週目。
ようやく人がまばらになってくる。
緑キャップの周回遅れの選手を抜く。
スイムゴールの沿岸が近づく。
岸壁では、テレビカメラが回っている。
後少し。
力を込めて腕をかく。
疲れていようがなんだろうが、ここで休める気持ちはない。
まずは、スイムパートで力を出す。

へとへとになりながら上陸する。
上陸すると同時に走り出す。
休むヒマはない。

ちょうど後ろから、我らが小金井トラ連のかん8親分が
声をかけてきた。
どうやら、タッチの差で俺の方が早かったのだ。

次つぎ、がんばれ !!
と、親分は俺を抜いて走り抜ける。

たったの1.5キロで、俺はかなり消耗していた。
自信のスイムが不調だったことがその原因だろう。
と、後になっては思う。

トランジットエリアに入るが、腕が疲れていてウエットの上が脱げない。
あせるな、あせるな。
と思うが、時間の流れは気になる。
後のことを考えると、靴下もはくし、サングラスもかける。
結局、かなりの時間をトランジットに使ってしまった。
たぶん3分くらいかかったのではないか。

バイクを持って走り出す。
係員に警告される。
スタート地点から走り出して。
そんなことすら、初心者には判らない。
これで少しタイムはロスしたのだろう。

走る。
スイムでの疲れは予想以上だった。
すでにかなり消耗している。
しかし、レースは始まったばかり。
後、50キロもあるのだ。

バイクパート。
始めて走るコースなので、始めの周は様子を見ながら走るしかない。
一周10キロを4周する。
アップダウンの激しいコースとは聞いていたが、本当にアップダウンがある。
始めの周は、それなりに力をかけて走るが、様子を見なくてもならず、
最高速ではない。

最初は海岸線を走る直線的なコース。
海岸はきれいな景観だ。
しかしきれいな景色に見とれる余裕はない。
雨は小降りになってきた。

キツイ上り坂に差しかかると、周回チェックの人たちに会う。
ゼッケン188番。
と声が聞こえる。
そのまま、必死の形相で坂を登る。

コーナーを右に走る。
がんがんがん、と 一斗缶をたたく親父さんの声援が飛ぶ。
がんばれ !!
沿道で声をかけてくれる
子供たちの声。

ごめん。
今の俺は、その声援に応えられない。

ギリギリで走ってる。
声援んの声に、黙ってうなずく。

俺の気力、体力はこのくらいなのか??

走る。
走る。

直線コースでは、水分補給をする。
バイクに取り付けていたドリンクボトル。
中身は市販のヘルシアにアミノバイタルを混ぜたもの。

こまめに、水分とエネルギーチャージをするのだ。
と、様々な方から教わった。

1周目

鋭角のカーブで、転倒した。

ほぼ直角に近いカーブだった。
速度を落とせと看板がいくつもあったが、必死なので判らない。
それよりも、自分の速度が早いとも思えないのだから、速度を
落とすことが判らない。

右カーブ。

雨に濡れた路面。

意識はない。

きゅうっと、転倒する。

右カーブのバランスを立て直そうとしてとっさに左にふれた。
すべる。

無意識で、立て直そうとしたカラダが反転する。

右脚、右腕、そのままひっくり返って、右肩。
そのまま回転して、左手の甲をすりむいた。
グローブを突き抜けての甲の擦り傷だ。

一瞬、頭が白紙になる。
しかし数秒のこと。

頭は?
骨は?
足首の捻挫は?

大丈夫だ。たぶん。

係院が、後続の選手を止める。

転倒した選手がいるので、きをつけて !!

起き上がる。

カラダは大丈夫だ。
ヘルメットもついている。

転倒で飛び散った、ドリンクボトルと、エネルギーバーを
拾い、再びレースに戻る。

かっこ悪いことに、ここが一番ギャラリーが多いところだった。

ガンバってー !!
と声援が聞こえるが、答える余裕はまったくない。

恥ずかしい氣持ちと、おれは俺だ、という氣持ちの半々。

よろよろと走り出す。
ペダルに靴が入らない。

がんばってぇ !!
という声がまた届く。

ありがとう。
でも、今の俺は、ごめん。
それに答える余裕がない。

それでも走りだす。

まだバイクは一周。たったの一周なのだ。
そのことを、一番自分が知っている。

レースでは誰も助けない。
いや、もたちろん、レスキューや、チームの仲間は助けにきてくれだろう。
けれども、それをアテにしてはダメなのだ。
一人ひとりで生き抜く力。

男でも、女でも。

これが、トライアスロンの道に踏み出した人の条件だ。

だからこそ。
その意味を知ることのみが、この尊さを知る。

たぶん、血だらけだろう。
そんなのはかまわない。

もう一度、走れ。

あきらめない。

それが一番大事なのだ。
目標を手にするまであきらめない。

まだまだ、ゴールは遠い。

 

 

 

《 後 編 》


2周目。転倒して遅れた時間を取り戻したい。
2周目は一度走ったコースなので、ある程度次の展開が読める。
アップダウンが激しいコースだが、コースの予測がつくだけ気分は楽になる。
直線で前を走る自転車を何台か追い抜く。
追い抜ける自転車もあるが、追い抜かれることもある。
いや、むしろバイクパートでは速い自転車がかなりいるので、バンバン追い抜かれる。
これは仕方ない。
トライアスロンの競技中、もっともスピードが出るパートがバイクパートである。
抜かれたことを悔やまない。
自分のペース。自分の走りが重要なのだ。

沿道では、エイドステーションで水を差し出す係がいる。
水でーす。
ありがたいが、バイクで走りながら水を受け取る余裕はない。
他のバイク選手も水を受け取らずに走りさっていく。

沿道に座り込んで応援してくれているおじさんもいる。
がんばれー。
小さな子供を連れて手をふるお母さんもいる。

ありがとう。
がんばるよ。

いつしか雨はやんでいた。
タイムはどうだ。
目標より遅れた時間を取り戻すことはできるのか。
3時間を切るためには、ランにつなげる時間は残り1時間以内でいたい。
あと1時間で2周と半分をクリアーできるか。
バイクパートを必死で漕ぐ。
漕ぐ脚を休めたりしない。

走れ。
走れ。

あまり何も考えていない。
無心に走る。
走ることだけに集中する。

周回すると前に転倒した場所を通過する。
かなり鋭角のコースだ。
排水溝の鉄册に乗り上げて滑って転倒したのだ。
金属は濡れると滑る。
今度は減速して充分気をつけて通過する。

残り2周。
残り1周。

残り1周に入ったところで、エネルギーバーであるカーボショッツを取り出して飲む。
以前トレーニングをしていて、バイク80キロを走った後にランがまったく走れなかったことがある。
これをハンガーノックというのだと、小金井トラ連の先輩から教わった。
カラダの中にあるエネルギーが枯渇してしまう現象だ。
時間にするとおよそ3時間。激しい運動を続けると3時間で体内に蓄えていた運動エネルギーが切れるのだ。
エネルギーがなくなる前に補充する。
それが、このエネルギーバーだ。
かなり甘いジャムのようなものだが、これを背中から取り出してバイクを漕ぎながら食べる。
気持ちに気合いが入る。
後、1周だ。

バイクパートを終えてトランジットに帰る。
今度は少し気持ちに余裕ができたので、素早く着替える。
後10キロ。

ランを走りはじめたが、かなり消耗をしている。
だいたいは自分がどのくらいのスピードで走っているかがわかるものだが、キロ6分で走れていないかもしれない。
1キロを何分のスピードで走れるか、というランの目安があるのだが、少なくともキロ5分で走りたい。
自分の実力では、調子が良ければキロ4.5分で10キロを走り続けることができるのだが、今は疲労が蓄積して、
キロ6分以上かかってしまう走りになっている。
両方の股がつりそうだ。
無理に力をかけすぎると、たぶんつってしまうことが判る。
バイクパートで坂を登る時に筋肉を使いすぎたからだ。
股がつらないように走る。
10キロの始めなのに、すでにかなり疲労している。
辛い。
あと10キロもある。
苦しい。
けれども走る。
ランの走りはじめからこんなにキツイと思ったこともないかもしれない。

練習ならあきらめて歩くこともするけれど、ここで歩いては何にもならない。
きつくても走る。
ゴールを目指せ。
ベストを尽くせ。

もう一本のカーボショッツを食べる。
カフェイン味だ。カフェインが入っているので、意識がしゃっきりしますよ、と店員さんが勧めてくれたが
よくわからない。無我夢中だ。

エイドステーションにさしかかる。
水でーす。
紙コップを差し出す手。
受け取る。冷たい水だ。走りながら飲むのでこぼして顔にかかる。
飲み終えたコップを捨てるためのゴミ袋をもってくれているスタッフがいる。
ありがとう。コップを投げ入れる。

水を飲むために立ち止まった選手がいた。
追い抜く。
前方に走る選手が数人見える。
みな同じくらいのスピードである。
少しづつ少しづつ距離を縮める。
何人かを追い抜く。

ランコースは海岸線を走るコースだ。
曇り空だが、海が開けてきれいな景色だ。
しかし感慨にふける余裕はない。
苦しさに耐えて必死で走る。

折り返しで帰ってくるかん8親分に合う。
互いに手をふり挨拶をする。
親分は快調に走ってる。

自分は苦しさを押さえて走る。
早く終わってほしい。ゴールにたどり着きたい。
そう思って走っている。

一人、さわやかな感じで追い抜いていった人がいた。
転んだんですか。と声をかけてくれた。
無言で頷く。右脚は血だらけになっていた。

ランのコースは平坦ではなく、けっこう登り坂下り坂がある。
体力が消耗している時の上り坂は堪える。
脚が前に進まない。心臓もバクバクいう。

ゆるい登りを終えて
ようやくランの折り返し地点。
後、5キロだ。
折り返すと、小金井トラのチームメイト、ムツゴロウさんの姿が見えた。
俺の後ろにいたのか。
ここで抜かれるのは嫌だ。
あせりながら、必死で脚を前に出す。
しかし、自分との戦いである。
後ろは振り向かない。
いいプレッシャーになってペースが若干早まったかもしれない。
ランを走り始めた時は、キロ6分から7分くらいで走っていたが、キロ5分近くに上がってきているかもしれない。

後半戦、かなりキツイ山のような登り坂に出くわす。
前を走っている人がたまらず立ち止まる。歩いている。
その横を追い抜く。
自分は歩いてはいないが、走っているというスピードでもない。
それでも気持ちは走ることをやめない。俺は歩いちゃダだ。
走り抜くんだ。

時計を見る。
もうすでに目標の3時間を切ることはできないペースになっている。
しかし、あきらめてはいけない。


トライアスロンの大会に出場して、完走をする。
と決めたのは今年の1月。
1月に走った時は、1キロ走るだけで心臓がばくばくいった。
久しぶりに泳いだスイムでは、100メートルをクロールで泳げなかった。
トライアスロンで完走するなんて、夢の夢かもしれない。
と、遠い目になった。
練習をして1ヶ月になった。
5キロくらい走れるようになったが、1時間近くかかった。51.5キロを4時間以内に走るのはかなり無理があると呆然とした。
それでも、続けてきた。
今年中にトライアスロンの大会に出場して完走する。
とにかく完走すればいいんだ。
タイムも距離もいいじゃないか。どんなものでも。
どの大会に出たらいいのか、トライアスロンをしている友人が、伊豆大島の大会がデビューするにはいいんじゃないか
とアドバイスしてくれた。
だが、伊豆大島の大会は6月6日。何も運動をしていないカラダで練習を始めてたった5ヶ月で完走をできるカラダになるのか。
まったくわからなかった。
伊豆大島の大会は、AタイプとBタイプがあった。
Bタイプは、スイムが750メートル、バイクが20キロ、ランが5キロだったので、思いきって短いBタイプに申し込みをした。2月のことだ。
目標を決める。決意をしなければ何も変わらない。
自分でトライアスロンを完走するという気合いを入れた。

トライアスロンの情報をネットで探した。
ショップを見つけたので、行ってみた。
しかし、あまりにも自分の実力が伴わないので、ショップに入っても店員さんに声もかけられなかった。
一人店の中にはお客さんがいて、店の人と話をしている。
しかし自分では話をする話題すらなかった。
恥ずかしさの氣持ちで店を出た。

少し体力がアップした頃
mixiで、「超初心者トライアスロン」というコミュニティをみつけた。
ここでいろんな情報を得た。
みんな初心者なので、気持ちがらくだった。
そこで知り合った人に「小金井市トライアスロン連合」があるよ、と教わった。
興味があったら声をかけてみてくださいとのこと。
おそるおそる小金井市トライアスロン連合の代表者の方へメールを送った。
メールの返信がきた。
まったく一面識もない人だったが、一緒に練習会に参加させてもらうことにした。
その人が、かん8親分だ。今は俺の尊敬する師匠である。

はじめの大会として、Bタイプに申し込んだが、がんばればAタイプのオリンピックディスタンスでも
出場して完走できるようになれる。
なによりも、オリンピックディスタンスを完走した方が喜びが大きいから、Aタイプにすることを勧めるよ。
と、かん8親分は言った。
超トラコミュでは、俺と同じくらいの年齢で、同じくらいに始めた人が、オリンピックディスタンスは無理。
無理するのはよくない、と意見を言ってくれた人もいた。

けれども、オリンピックディスタンスに目標を切り替えた。
はじめから、キツイことを判っていてやることを決めたトライアスロンだ。
目標は大きい方がいい。

オリンピックディスタンスに目標を定めてから、自分の目標タイムを計算した。
はじめは、4時間制限時間を3時間半で走れり切れるようにしよう。と思った。
練習を積んでいったら、3時間15分を目標にしてもいい、と思うようになった。
レース直前には、3時間を切ってやる ! という闘志に変わっていた。

そうして走り続けた結果が、今出ようとしている。
走っている自分が一番判る。
もう3時間は切ることができない。
それどころか、3時間15分も切れない可能性もある。
あきらめるな。

俺の約半年はなんだったんだ。
息が苦しい。
しかし、脚を前に出すスピードをゆるめてはダメだ。
ピッチをあげろ。
自分の誇りを取り戻せ。

ゴールに近づいてきた。
沿道にかん8親分と北さんが笑顔で立っている。
もう少しだ、がんばれ。と手を差し出してくれた。
2人の手の平にタッチしてゴールに向かう。
必死で手を振った。脚を上げた。最後まで氣を抜かない。

ゴールにはたくさんの人がゴールする選手を見守ってくれている。
次はゼッケン188番。
ご、ごう、ごううこんまる、ひこさん。とアナウンスが聞こえた。
名前を噛むのは愛嬌だ。

ゴール。
テープを切った。
拍手がある。
到着した選手を迎え、たたえる子供がよってきた。
紙コップをくれる。
ウイダーインの甘い水だ。冷たくておいしい。
大会特製のバスタオルを肩にかけてもらう。

完走した者は一人ひとりが勝利者だ。

ほどなくして、後ろにせまっていたチームメイトのムツゴロウさんがゴールをした。
彼を迎えて一緒に、かん8親分たちの元へ歩く。

おう、お疲れさん。
がんばったね。
みんな満面の笑顔だ。

残りのチームメイト、キンちゃんもゴールする。
全員が完走した。

完走した感想はどうだね?
と聞かれる。

複雑な心境だ。
完走をした。当初の目標はクリアーした。
しかし、レース直前に自分で決めた3時間を切るという目標を達することができなかった。
海が荒れた、波があった、転倒した、そんな理由はどうでもいい。
すべて、自分の実力だ。
今の自分の実力が、そのままここにある。それ以上でも以下でもない。
転倒したが、大きな事故にはならずに走り切ることができた。
これを「運」と呼ぶこともできるかもしれない。
それも今の俺の実力なのだろう。

今回、小金井市トラチームメイトで、ボクと同じく初の51.5キロに挑戦したキンちゃんが、
51.5キロの向こう側には何があるんでしょう?
という質問をした。
それに、先輩のサルさんという豪傑な女性はこう答えた。


何が待っているのか・・・。
かっこいい事言わしてもらうと
スタートラインが
あるよ!
完走はゴール
じゃない!

次に進む為の出発点で終点はないよ~!

まったくその通りだった。

完走をすれば、何か感動があるのだろう、
と思っていた。


もしかして感極まって涙するかもしれない。

今までのことを振り返って、
しんみりするかもしれない。

しかし、
今の俺にその感情は湧いてこなかった。

次に向かって進もう。

次こそ絶対3時間を切る。

そして2年後、
さらに過酷なロングディスタンスの宮古島にも出場できるようになろう。
そう誓った。

まだトライアスロンの道は始まったばかりだった。

ABOUTこの記事をかいた人

郷右近丸彦プロフィール 郷右近 丸彦(ごううこん まるひこ) 株式会社スピリッツ・ザ・ウォーター代表取締役 天地彌榮塾(あめつちいやさかじゅく)塾長 NPO法人サスティナブル・コミュニティ研究所 理事・主任研究員 1959年生まれ 職業・プランナー、プロデューサー、企画コンサルタント。 東京国際大学卒業後、メーカー、マスコミ業界、テレビ事業会社を経て独立。 平成9年9月9日に銀河鉄道999を走らせる「銀河鉄道999フェスティバル」、鳥取県境港市のテーマパーク「ゲゲゲの妖怪楽園」、環境浄化せっけん「善玉バイオ洗剤《浄(JOE)》」など数々の社会現象として話題となるイベント、事業、商品開発などを企画プロデュースする。日本を明るく元気にする「感動プランナー」を育成し、事業プロデュースをする感動創造プロデューサーとして活躍。解決が難しい課題を、わかり安く親しみやすい切り口からアプローチ、話題づくりにつなげることが評判となり、一部上場会社の企画顧問、様々な企業コンサルティングを行う。 現在は「ほんたうの幸ひ」とは何か?をテーマに「天のルール」と「地のルール」を教える「天地彌榮塾(あめつちいやさかじゅく)」の塾長として活躍中。全国の神社を案内しながら、古神道にのっとった神社参拝方法や日本人の本質、大和魂とは何かを教えている。 その他役職 NPO法人サスティナブル・コミュニティ研究所 理事 主任研究員 趣味 書家。映画、舞台、能、絵画、メディアアートなどの芸術鑑賞 https://www.facebook.com/gogo.ukon